研究概要 |
[1](1)ウレタン麻酔したラットの脳室内に投与したNMDAによる血中カテコールアミン増加が、選択的アドレナリンα_1受容体遮断薬(HEAT)、PLC阻害薬(U-46619)、DGリパーゼ阻害薬(RHC-80267)、MGリパーゼ阻害薬(URB602)の脳室内前処置によっていずれも抑制ないし消失した。(2)視床下部室傍核にダイアリシスプローブ介して投与した1mM NMDAによる室傍核のノルアドレナリン(NA)遊離増加および血中カテコールアミン(ノルアドレナリンおよびアドレナリン)増加がトロンボキサンA2受容体遮断薬(s-145)によって消失した。(1)、(2)の内容をまとめて投稿中(minor revision)。[2]α1アドレノセプター刺激薬フェニレフリン(0.3,1mM)あるいはPLC刺激薬m3M3FBS(0.1mM)の室傍核への直接投与は、室傍核ノルアドレナリン(NA)遊離および血中カテコールアミンのいずれも増加させたが、0.1mM o3M3FBS(m3M3FBSの不活性体)投与は影響しなかった(投稿準備中)。[3][1]および[2]から室傍核におけるα_1アドレノセプター賦活に関連した一連のシグナル伝達系が副腎髄質系賦活に重要な役割を果たしていることが示唆された。このシグナルカスケード系の異常または破綻が、副腎髄質系出力の過剰亢進をきたし、その結果ストレス関連疾患の基盤となる生物学的脆弱性が醸成され、最終的に疾患の発症に至るのではないかと推測される。得られた成績は、うつ病・不安障害・自律神経機能障害などストレスに起因する様々な病態の発症機序の解明に新たな視点を提供しうるという点で意義があり、新たな治療薬開発のための標的を考案する上で重要性が高いと考えられる。
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