研究概要 |
[1](1)ウレタン麻酔したラットの脳室内もしくは視床下部室傍核(PVN)に局所投与したNMDAによる血中ノルアドレナリン、およびアドレナリン増加の薬理学的解析から、PVNに存在するα1アドレノセプター受容体下流のPLC-DG(ジアシルグリセロー)lipase-MG(モノアイルグリセロール)lipase経路から生じるトロンボキサンA2が、PVNに投射するノルアドレナリン神経系終末に作用して、ノルアドレナリン遊離を亢進し、その結果、副腎髄質からの血中カテコールアミン遊離が促進されることを証明した(Eur.J.Pharmacol.,640,55-62,2010).(2)さらに拘束ストレス負荷ラットの形態学的解析から、脊髄中間外側核(IML)に注入した逆行性色素(Fluoro Gold)で標識されるPVNニューロンにおいて、(a)拘束ストレスがCOX1、COX2、iNOSの発現を増加させること、(b)COX1、COX2、iNOS阻害薬の腹腔内投与が拘束ストレスによるFos発現を減弱させることを証明した(Neuroscience,170,773-781,2010)。[2]拘束ストレス負荷したラットの血中カテコールアミン増加が、(a)PPAR gamma agonist (rosiglitazone,PGJ2)の腹腔内投与により抑制され、逆に、PPAR gamma antagonist(GW9662)の腹腔内投与によってさらに増強されること、(b)拘束ストレスが経時的にPPAR gammaの核内移行を引き起こすことを報告した(Neuro 2010,神戸)。麻酔ラットおよび覚醒ラットの実験から得られた成績は、うつ病・不安障害・自律神経機能障害などストレスに起因する様々な病態の発症機序の解明に新たな視点を提供しうるという点で意義があり、新たな治療薬開発のための標的を考案する上で重要性が高いと考えられる。
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