研究概要 |
1.集積症例数:現在までに18歳~60歳の統合失調症患者83例(M:F=34:49)から高解像度のMRIを取得した。また、同時に48例(M:F=18:30)症例からゲノムの提供を得た。ゲノムの集積を待って遺伝子解析を行い、MRI所見を中間表現系とした統計処理を行う予定である。 2.統合失調症と衝動性の関係:統合失調症患者23例(36.0±10.3歳:M/F=8/15)と健常者23例(35.5±9.8歳,M/F=8/15)を対象とし,VBM (Voxel-Based Morphometry)により群間比較を行った。その結果,健常群と比較して統合失調症群で有意な体積減少を認めたOFC (orbitofrontal cortex)と衝動性との間の相関関係を調べた。VBMによる群間比較では両上側OFC,右下側OFC,左中部OFCにおいて統合失調症群の有意な体積減少を認めた。また、Barratt Impulsiveness Scale-11 (BIS-11)を用いた衝動性の評価において統合失調症群は健常群に比べ有意に高かった。OFCと衝動性の関連性では統合失調症群で右上側OFCと衝動性の総評価点,右上側OFC,左中部OFCと下位項目の無計画衝動性において負の相関を認めた。いずれの相関関係も,健常群には見られなかった。 3.高齢の統合失調症における携帯画像研究:予備的研究としてアルツハイマー型認知症の診断支援ツールであるVSRAD(Voxel-Based Specific Regional Analysis System for Alzheimer's Disease)を用いて、比較的高齢(50歳以上)の統合失調症患者の脳MRI画像の解析を行った。患者10例(平均年齢60.2歳)を対象とし、VSRADで海馬傍回の萎縮度を調べたところ、Zscoreは0.70±0.47と健常高齢者に比して明らかな萎縮は認められなかった。統合失調症患者の加齢に伴う脳萎縮のパターンはアルツハイマー型認知症と異なることが示唆された。 4.前頭葉眼窩面脳溝パターン研究:統合失調症47人(M/F=23/24)と健常者47人(M/F=17/30)のMRI画像を用い前頭葉眼窩面脳溝パターンを3つに分類し、臨床症状との関連を考察し先行研究と比較した。健常者と男性統合失調症患者の分布は先行研究と同様であるが、女性は右半球において男性の分布と異なり健常者とは有意差がなかった。
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