研究概要 |
1.統合失調症患者49名および健常者45名の脳MRIを撮影し、眼窩前頭皮質の脳溝パターンを同定した。また、対象者の採血標本よりゲノムを抽出し、PCR,RELP法を用いてCOMT(Val158Met)およびBDNF(Va166Met)の一塩基多型を同定し、脳溝パターンとの関連を調べた。前頭葉眼窩面の脳溝パターンは、統合失調症と健常者の間では、先行研究と同様なパターンの違いの傾向が見られた。統合失調症と健常者においてCOMT,BDNF遺伝子多型の分布には有意差は見られなかったが、統合失調症の脳溝パターンとBDNF遺伝子多型との関連に有意傾向が見られた。 2.統合失調症患者群と健常群の前頭葉眼窩皮質の脳溝パターンの分布において、女性患者群の右半球では男性群よりType Iが有意に多かった。Type IIIをもつ男性患者でPANSS総得点が高くかったが、女性はパターンの分布と臨床症状は相関しなかった。 3.統合失調症患者101名および健常対照者85名のMRIデータから全脳の灰白質、白質、脳脊髄液の容積を算出し、加齢に伴う容積変化のパターンを比較した。両群間の容積積比較では、患者群において脳脊髄液容積の有意な拡大が認められた。疾患群と健常群とも灰白質、脳脊髄液に加齢に伴う変化のパターンを示したが、白質容積に関しては、患者群と健常群とでは異なる推移を示した。 4.Voxel-based morphometry (VBM)による脳容積変化の解析を行った結果、50歳以上の高齢統合失調症群では、高齢健常群と比較して左右前頭眼窩皮質等で脳萎縮を認めたが、アルツハイマー病群のような脳全体に及ぶ萎縮は認められなかった。 5.統合失調症における衝動制御の障害と前頭眼窩皮質の構造異常との関連性について検討した。MRI画像をVBMで行った結果、疾患群は健常群と比べ前頭眼窩皮質の有意な容積減少を認め、また衝動性も有意に高いことが示された。疾患群内の検定では前頭眼窩皮質の容積異常と衝動性との関連性が認められた。
|