研究課題/領域番号 |
20591376
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
岸岡 史郎 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (60137255)
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研究分担者 |
前田 武彦 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (50271010)
木口 倫一 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (90433341)
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キーワード | ニコチン / 耐性 / 鎮痛 / コルチコステロン / オピオド / モルヒネ |
研究概要 |
【目的】ニコチンは血清コルチコステロン(SCS)上昇を生じ、また抗侵害作用を示す。さらに、内在性オピオイドシステムはニコチンによる抗侵害作用に関与しているが、コルチコステロン上昇には関与していない。本年は、マウスにおけるニコチン誘発SCS上昇と抗侵害作用における耐性形成について検討した。 【方法】SCSは蛍光法により測定した。鎮痛効果はtail-pinch法により評価した。モルヒネ(40mg/kg)あるいはニコチン(5mg/kg)を1日二回、4あるいは5日間皮下投与することにより、耐性を形成させた。【結果】SCSはニコチン投与(0.3-5mg/kg)により用量依存的に上昇した。ニコチン(5mg/kg)によるSCS上昇は、ニコチン性アセチルコリン受容体拮抗薬であるメカミラミン(1mg/kg)により拮抗されたが、オピオイド受容体拮抗薬であるナロキソン(1mg/kg)併用投与では影響されなかった。一方、ニコチンの鎮痛効果は、いずれの拮抗薬の併用投与でも減弱された。モルヒネを反復投与したマウスでは、モルヒネおよびニコチンいずれの鎮痛効果も減弱していた。すなわち、交差耐性の形成が見られた。しかし、ニコチンを反復投与したマウスではニコチン誘発SCS上昇作用および抗侵害作用は減弱していたが、モルヒネによるSCS上昇作用および抗侵害作用は影響されなかった。【意義と重要性】ニコチン依存における内在性オピオイドシステムの機能的役割を初年度は明らかにしたが、ニコチン耐性形成時には同システムが活性化されない可能性が本年度の研究により明らかになった。慢性投与の結果として生じる嗜癖性薬物の依存と耐性の形成基盤には、異なる機構が存在することを示す研究結果であり、非常に興味深い。 本研究のさらなる展開は、薬物依存の治療および耐性形成の予防に結びつく重要な成果が期待される。
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