統合失調症では記憶の障害が重要な病態と考えられる。そのため、ニューロプラスチンを統合失調症の記憶・認知障害に関わるひとつの分子として、細胞、動物の記憶関連行動、臨床現場での記憶・認知機能評価の視点から研究を行うことが「研究の目的」である。 1. ニューロプラスチンはその近縁蛋白であるベイシジンとともにイミュノグロブリンスーパーファミリーに属する。胎児ラット脳のcDNAライブラリーからニューロプラスチン遺伝子とベイシジン遺伝子のオープンリーディングフレームをクローニングした。今後、両蛋白のmRNAに対するリボプロープを作成して代表的な記憶モデルである水迷路試験を経験させたラットの脳内における両蛋白のmRNAの分布をin situ hybridizationによって解析する予定である。 2. 獨協医科大学とその関連病院に通院中または入院中の統合失調症の患者、及び健常対照者を対象にして、統合失調症認知機能簡易評価尺度(BACS)の評価と血液からのDNA抽出の集積を進め、150例の患者、200例の健常対照者が集まった。その結果、言語性記憶、ワーキングメモリー、運動、言語流暢性、注意、遂行の各項目において、健常対照者に比べ統合失調症では有意な低下が認められた。今後、これらの認知機能と関連遺伝子の一塩基多型の解析を行う予定である。先の「研究実施計画」に記載したニューロプラスチン遺伝子のプロモーター領域に位置する一塩基多型とBACSの評価との関連を解析する。さらに最近、第22染色体短腕領域の疾患関連遺伝子と認知機能との相関を示す論文が発表されていることから、これらの疾患関連遺伝子とBACSの成績との関連を解析する予定である。
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