研究概要 |
本研究は、うつ病患者の薬物治療を個人ベースで最適化する目的で、磁気共鳴撮像装置(MRI)による画像検査を主体とした検査プロトコルの確立を目指すものである。ここでの「治療最適化」とは、診療の初期段階で病態把握のための検査バッテリーを実施し、その結果を元に治療方針を定め、患者ごとに奏功する薬物の種別・用量設定までの期間を可能な限り短縮することを意味する。実施期間(5年)の前半で患者の病態把握と治療反応性を予測するのに適した検査の確立を行い、後半でその有効性を評価するための前方視的研究を実施する。本年度はその2年目として、前年度に作製した機能的MRI(fMRI)検査用・認知課題を、うつ病患者約10名と、同年代の健常者約30名を対象として実施した。認知課題としては、情動図版(International Affective Picture System, Lang et al.2005)を使用した視覚的情動課題や、心の理論(Theory of Mind)に関連した自己参照課題などが実施された。そして、各認知課題遂行中の主要脳部位(扁桃体・海馬・内側前頭前野など)における活動性と、うつ尺度など他の臨床評価尺度との関連性(患者群)、もしくは個人の性格傾向などとの関連性(患者群・健常対照群双方)について解析が進行している。これらを通して、当該認知課題が患者当人のうつ病の状態を反映するstate-dependentな指標、もしくは、うつ病への罹りやすさを示すtrait-dependentな指標として有用であるか、詳細な検討を行っている。来年度以降、より多くの被験者を対象とした検査を継続しながら、治療最適化において有用な認知課題の絞り込みを行う予定である。
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