統合失調症の長期予後を改善させるには特に病初期の治療アドビアランスが重要である。しかし統合失調症は疾患特性としてアドヒアランスが得にくいことがわかっている。申請者は統合失調症での、症状・病識・アドヒアランスの関係について102名の患者で予備的に検討した結果、病識とアドヒアランスのみに関連があり、症状と病識、症状とアドヒアランスは関連しないことを見いだした。上記の結果から統合失調症の長期予後を改善させるには、病識をどのように捉え働きかけるかが重要ではないかと考え1.統合失調症の長期予後にとって病識はどのように関与するか?2.病識を構成する要因は何か?3.どの要因がどのような介入で改善しうるか?4.結果として長期予後は改善されるか?という臨床疑問を解くべく本研究を着想した。 平成20年度内において症例エントリー200例を達成できた。しかし初期ポイントでの臨床情報と認知機能評価を達成できたのは98名であり、エントリー時点で精神症状が活発な場合、複雑な認知機能評価を完遂するには大きな障壁があることが判明した。そのため初期の認知機能評価時点を投薬開始後1ヶ月以内とプロトコール変更を行いその後の症例エントリーを行っている。申請期間の制約から本研究での追跡期間は当初1年間とするが、可能な限り長期間追跡を行うべく体制をとっていく。統合失調症患者の病識と最も関連する要因としては認知機能がメタ解析によっても確認されている。また認知機能は統合失調症の重要なエンドフェノタイプとしても注目されており、申請者らは現在統合失調症の診断のみならず、統合失調症に特異的と考えられている認知機能を含めたエンドフェノタイプを規定する遺伝子探索を全ゲノム解析法によって検討中である。
|