本研究は、統合失調症をはじめとする精神疾患における社会認知の障害の特徴を明らかにすることを目的としている。本年度は、そのための準備として、新たな社会認知を評価する課題を作成して、健常対照者を対象に予備的な検討を行うことを計画した。 文献検索、学会等での情報収集を行いながら、定期的に研究代表者、研究分担者、研究協力者等、本研究に携わるものが集まり、研究打ち合わせをして、社会認知を包括的に評価するための新たな課題の作成に着手した。本研究において、社会認知と併せて検討を行う予定としている神経心理課題である言語流暢性課題とウィスコンシンカード分類テストとを用いて、統合失調症と精神病発症危険群とを対象とした予備的な検討を行い、論文にまとめた。それとともに、欧米では既に使用されている社会認知を評価する課題を、本研究における対照課題として用いることを計画した。海外の論文執筆者と交渉を行い、日本語版作成の許可を得て、日本語版課題を完成させた。この課題の信頼性や妥当性を検討するために、まずは健常大学生を対象として予備的な検査を開始した。社会認知は、近年本邦でも注目され始めているが、臨床的に使用可能な課題がほとんどなく、研究の準備に手間がかかることが多い。また、研究間で異なる課題を使用することが多いことから、研究結果を比較検討したり、共同研究を行ったりする妨げとなっている。そのため、欧米でよく使用されている標準的な社会認知課題の日本語版を作成することは、非常に意義の高いことである。また、本研究が目的としている社会認知を包括的に評価する新たな課題を作成する際にも、比較可能な参考となるデータを得ることができることから、非常に有用となる。
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