本研究は、非侵襲的方法により脳活動をリアルタイムで捉えることができる近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)を用いて、自閉症スペクトラム障害の前頭葉機能の経年変化パタンを明らかにし、生物学的異種性マーカーの検索を行うことを目的としている。 今年度は、昨年度研究協力を依頼しデータ収集を行なった20名の定型発達児童うち15名に対し、再度研究協力を依頼し、経年的データの収集を行なった。さらに、新たな定型発達児のデータ収集も行い、昨年度のデータに追加した。具体的には、認知機能を評価するために、ウエクスラー知能検査(WISC-III)を、実生活場面での行動の評価には、CBCL (child behavior check list)を、定型発達児であることを確認するために、小児・青年用精神疾患簡易構造化面接法(M.I.N.I KID)および対人反応性尺度(SRS)を実施し、前頭葉機能計測のため、認知課題施行中の脳血流変化を計測した。 これらの定型発達群の縦断的および横断的データにより、認知課題遂行中の前頭前野の血流変化に関して、発達に伴い血流変化が大きくなるという経年変化を捉えることができた。 また、自閉症スペクトラム障害患者に関しては、東京大学医学部附属病院こころの発達診療部・発達障害外来に通院する患者をリクルートし、10名のデータ収集を行なった。自閉症の診断および重症度については、DSM-IV、CARS (Childhood Autism Rating Scale)を用いて評価した。 精神年齢と暦年齢を統制した自閉症スペクトラム群と定型発達群との比較を行なったところ、自閉症スペクトラム群では前頭前野の血流変化が小さい傾向が見られた。
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