研究課題/領域番号 |
20591398
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
ANITHA A・Pillai 浜松医科大学, 子どものこころの発達研究センター, 特任助教 (70377753)
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研究分担者 |
辻井 正次 中京大学, 現代社会学部, 教授 (20257546)
中村 和彦 浜松医科大学, 医学部, 准教授 (80263911)
岩田 圭子 浜松医科大学, 子どものこころの発達研究センター, 特任助教 (30415088)
宮地 泰士 浜松医科大学, 子どものこころの発達研究センター, 特任助教 (60444345)
松崎 秀夫 大阪大学, 医学系研究科, 特任准教授(常勤) (00334970)
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キーワード | 自閉症 / 中枢神経系 / セロトニン / インテグリンβ3 |
研究概要 |
自閉症研究ではセロトニン機能異常の重要性が指摘されているが、その発症基盤は明らかでない。我々は自閉症者における中枢神経内セロトニン・トランスポーター(SERT)の広汎な密度低下および末梢血リンパ球内のインテグリンβ3サブユニット(ITGB3)mRNAの低下を見出したことから、SERTの発現とその調節因子は自閉症の病態に重要な役割を果たしていると考え、SERTの発現を調節しているとされるSTX1A-ROBO3・ITGB3・MacMARCKSの遺伝子についてmRNA発現解析と遺伝子関連研究を行い、各々の自閉症との関連を検討した。 まず、死後脳研究として、4つの因子に対するmRNAの発現の相異を検討した。検討部位は前帯状回・皮質運動野・視床とした。これらのサンプルにqRT-PCRを施行し、遺伝子発現の変化は2-DDCTによって決定した。次に、家族内遺伝子関連研究として、白人252家系と日本人126家系のトリオサンプルで検討を行った。SNPの調査にはTagMan法を使用し、関連に対するマーカーには伝達不均衡テストで検討した。 死後脳研究では、STX1Aの発現が前帯状回で有意に減少していた。また、ROBO3の発現は前帯状回と皮質運動野で、ITGB3の発現は前帯状回と視床で、MacMARCKSの発現は前帯状回でそれぞれ有意に増加していた。次に、家族内相関解析では、STX1Aは白人・日本人とも有意差が認められ、ROBO3は白人において有意差が認めぢれた。また、自閉症診断基準であるADI-RとそれぞれのSNPとの関連について解析したところ、STX1AではSNP08とADI-R_Dスコアで、ROBO3ではSNP10とADI-R_Aスコアで有意差が認められた。 これらの結果から、STX1Aの異常発現はSERTの発現過程を妨げ、自閉症の症状が現れる時期に関係することが示唆された。また、ROBO3の異常発現は、神経系の発達を妨げ、社会性の障害と関連することが示唆された。さらに、ITGβ3とMacMARCKSの異常発現はSERTの発現に影響を与えうる可能性が示唆された。以上のように、セロトニン系関運遺伝子が自閉症の病態に関与することが推測された。
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