研究概要 |
本研究の目的は、統合失調症患者の社会的認知障害をI.神経生物学的水準、II.認知心理学的水準、III.行動学的水準の3つの水準にわけて検討し、それらの関連を明らかにすることにある。 昨年度に引き続き、統合失調症患者および健常被験者を対象として、脳内各部位の構造評価のために、T1-MPRAGE画像撮像を行い、社会的認知・社会行動との関連を評価した。本年度はその結果の解析から、前頭葉機能と関連する社会行動評価尺度と局所灰白質体積の関連を解析し、背外側前頭前皮質体積減少と遂行機能障害の関連を統合失調症患者群において確認した(Kawada et al., 2009)。また、社会的認知に関与するさまざまな脳部位間をつなぐ白質の病態の評価のため、拡散テンソル画像撮像を行い、統合失調症群における局所の白質病理(Fractional Anisotropyの低下)と社会的認知検査成績の関連を検索した。結果、情動的表情認知の障害と局所白質病理の関連を、統合失調症群において確認した(Miyata et al., in press)。また、これら脳構造評価の基礎となる方法論的研究として、頭蓋内体積と大脳皮質・白質体積の関連、および統合失調症がそれらの関連に与える影響についても報告した(Ueda et al., 2010)。 さらに本年度は、共感性を測定する『目から心的状態を読み取るテスト:Eyes Test』などの社会的認知課題を用いて、統合失調症患者、および健常被験者を対象に、機能的MRI実験を行った。この結果は現在、投稿準備中である。
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