研究課題
22年度では、21年度に引き続き、in vivo蛍光イメージング装置およびpositron emission tomography(PET)を用いて、神経幹細胞の成体サル脳内における動態をin vivoで可視化するための神経幹細胞特異的な標識技術の開発を行った。ここでは、神経幹細胞特異的に賦活されるnestinプロモーター/エンハンサーを、カニクイザルBACライブラリーよりクローニングし、その下流に緑色蛍光タンパク質(EGFP)、あるいはアミノ酸トランスポーター遺伝子を挿入したレンチウィルスベクターを構築することで、感染神経幹細胞において特異的にそれらタンパク質を発現するレンチウィルスを調製した。それを、ラット胎仔海馬歯状回より初代培養した神経幹細胞に感染させ、当該神経幹細胞を成獣ラット脳室下帯に移植した後に、in vivo蛍光イメージング装置およびpositron emission tomography(PET)を用いて、生体脳内における移植神経幹細胞の増殖・遊走をin vivoで検出画像化することを行った。本技術により、さらに、ほ乳動物成体脳内に内在する神経幹細胞のin vivoイメージングを行うことが可能である。22年度には、CMVプロモーターによるHSV1-tkのレンチウィルス発現系を構築し、それをカニクイザル脳に感染させた後に、脳室内に脳定位固定装置を用いてガンシクロビルを投与することで神経幹細胞障害の誘導を行った。その結果、脳室下帯における神経幹細胞死の誘引を確認したが、bystander effectによると推測される周辺細胞の非細胞特異的細胞死も多く確認され、ウィルスの感染方法やガンシクロビルの投与の仕方の至適化が必要と判断された。