研究概要 |
本年度は,昨年度に引き続き, 認知矯正療法(NEAR ; Neuropsychological Educational Approach to Cognitive Remediation)のオープントライアル(feasibility study)を継続し,サンプル数を増やすとともに, 中途より社会機能評価として新たにSFS (Social Functioning Scale), QOL評価としてMOS SF-36v2を導入し,社会機能,QOLに対する効果についての検討も開始した。オープントライアルは,当大学を含め5施設で6ヶ月間NEARを受けた介入群(n=51)と通常治療群(n=22)とで6ヶ月間の認知機能の変化について比較検討した。認知機能評価にはBACS (Brief Assessment of Cognition in Schizophrenia)を用いた。その結果,言語記憶,作業記憶,注意の各領域で,介入群が通常治療群に比して,有意な改善効果が認められた。また,社会機能評価(介入群のみ,n=23)については,有意な変化は認められず,一方,QOL(介入群のみ,n=22)については身体機能,対人機能について,有意な改善効果が示唆された。また,BACSにおける総合評価の変化と社会機能評価のうち就労に関連する項目の得点変化が正の相関を示しNEARによる認知機能の改善効果が顕著であるほど,就労に関連する社会機能の改善が明らかであることが示された。 オープントライアルの結果ではあるが,NEARが統合失調症の認知機能障害,QOLの改善に有用であり,認知機能の改善が社会機能の向上につながる可能性が示唆された。
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