研究概要 |
昨年度に引き続き,認知矯正療法(NEAR ; Neuropsychological Educational Approach to Cognitive Remediation)の6ヶ月間のオープントライアル(feasibility study)を継続し,サンプル数を増やして検討を行った(統合失調症患者,n=62)。そのうち,中断例は11名(17.4%)であり,動機の低下,精神病症状の再発が主な要因であった。社会機能評価(GAF)およびQOL評価(SF-36)が実施できた者は,そのうち31名であった。まず,認知機能に対する効果については,中断例を除いた介入群51名と通常治療群(n=22)とで比較検討した。認知機能評価にはBACS (Brief Assessment of Cognition in Schizophrenia)を用いた。その結果,言語記憶,作業記憶,語流暢,注意の各領域で,通常治療群に比して,介入群で有意な改善効果が認められた。また,社会機能評価およびQOL評価が実施できた31名については,比較対照群をおかないパイロット試験として実施されたが,介入前と比較して介入後には,社会機能,精神症状(PANSS),SF-36のうち身体機能および対人機能に有意な改善が観察された。 パイロットスタディの段階ではあるが,NEARが統合失調症の認知機能障害,社会機能,QOLの改善に有用である可能性が示唆された。今後,無作為化比較対照試験(RCT)を実施する価値があると考えられた。
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