研究概要 |
前年度に引き続き、熊本大学医学部附属病院神経精神科若年性認知症外来を受診した連続例の中で、前頭側頭葉変性症(FTLD)の国際診断基準(Nearly et al, 1998)を満たした症例を登録した。これらの対象について、全般的な認知機能検査としてMini-mental state examination (MMSE)、前頭葉機能ないし遂行機能障害の測定にはFrontal assessment battery (FAB)や語流暢性検査、常同行動評価尺度であるStereotypy Rating Scale (SRI)に加え、包括的な精神症評価尺度であるNeurosychiatric Inventory (NPI)など、各種検査結果をすでにデータベースに蓄積した。また、全対象について、頭部MRIならびに脳血流SPECTを施行した。さらに、今年度は対象の中から、semantic dementia (SD)を抽出し、その食行動を検討した。その結果、全例に食物/非食物の判別障害を認めた。この結果は、SDでは重症度や口唇傾向によらず、意味記憶障害によって食物か否かを正しく同定できずに異食が起こる可能性が示唆された。さらに、非食物同定率、積極的誤反応率、異食のエピソードの有無から、右側優位萎縮型SDにおいて異食のリスクがより高くなる可能性が考えられた。
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