レビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies ; DLB)の臨床・病理診断基準の妥当性の検討のために、平成21年度は以下の検討を行った。DLBの臨床診断基準は、DLB発症の後に示される特徴的症状および検査所見を基に作成されているが、早期の治療を開始するためには、DLBを軽度認知障害(MCI)の時点で診断することが必要である。研究者は物忘れドックで見出されたMCI患者のうち、REM睡眠行動障害を伴う患者について詳細な認知機能検査、頭部MRI検査、脳PET検査、MIBG心筋シンチを行い、脳PET検査で後頭葉にびまん性の糖代謝低下を示す患者は、MIBG心筋シンチで取り込みの低下を示し、認知機能検査で視覚認知機能障害を示すことから、DLBのMCI状態にあるとみなすことができることを示した。これらの結果は学会発表され、欧文論文に受理されている。次ぎに、DLBの病理診断基準の妥当性については、レビー病理変化に神経原線維変化よりなるアルツハイマー病理変化が加わった場合、両者の程度がDLBの臨床像にどの程度関与しているかがlikelihoodとして示されているが、研究者はDLB剖検脳45例について、レビー病理変化に加え、神経原線維変化とアミロイド沈着よりなるアルツハイマー病理変化の程度を、研究者らの評価方法とともに、最も最近のBrain-Net Europeの評価方法を用いて定量的に検討した。この結果、改訂版の病理診断基準は研究者らの基準による病理学的亜型と相関し、レビー病理変化に加えて、神経原線維変化とアミロイド沈着の両者の程度を考慮してlikelihoodを評価することが、DLBの臨床像をより良く反映することが示された。これらの結果は学会発表され、欧文論文に投稿されている。
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