レビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies : DLB)の臨床・病理診断基準の妥当性の検討のために、平成22年度は以下の検討を行い、実績を得た。 DLBの臨床診断基準は、特異度は高いが感度が低いことが知られているが、その理由として、診断基準を満たす以前のDLBの前駆状態にみられる特徴的な臨床症状や画像所見が明確でないことが挙げられる。研究者は、REM睡眠行動障害(RBD)を有する非認知症患者に脳FDG PETを施行し、3D-SSPを用いて正常ダータベースと比較した。さらに、これらの患者にMIBG心筋シンチも施行した。その結果、約半数がDLB患者に特徴的な後頭葉有意の糖代謝低下を示した。また、左後頭葉の糖代謝低下は、神経心理検査でDLB患者に特徴的な視覚認知障害と相関していた。一方、全ての患者はMIBG心筋シンチで低下がみられ、心臓の交感神経末端の変性を示していた。これらの結果より、RBDを有するDLBの前駆状態の患者において、脳FDG PETでの後頭葉の糖代謝低下は、DLBの発症以前から認められる特徴的画像所見であることが示された。 DLBの病理診断基準の妥当性は、まだ十分に明らかになっているとはいえないが、その理由のひとつとして、認知症を伴うパーキンソン病(PDD)とDLBの病理学的差異があいまいであることが挙げられる。研究者は、DLBとPDDを含めた剖検脳において、アルツハイマー病理の程度を免疫組織化学的に検討し、定量的検討結果を研究者らの方式と最新の国際方式で評価し、DLBとPDDの間で比較した。その結果、脳幹や小脳にアミロイド沈着を示した割合はDLBでPDDより有意に高かった。また、アミロイド沈着の強さもDLBでPDDより有意に強かったが、神経原線維変化の強さは両者で有意差はなかった。認知症が先行するDLBの頻度はアミロイド沈着の強いもので有意に高かったが、神経原線維変化の強さとは関係がなかった。これらの結果は、アミロイド沈着はパーキンソニズムの発現に比べて、認知症の発現により関与していることを示唆している。
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