研究概要 |
本研究は強迫性障害の病態生理をより明らかにすることを目的に、治療前後における認知機能、および脳機能の変化を治療法別に検討するものである。 対象は、18歳~60歳、構造化面接により強迫性障害と診断された外来患者で他の精神疾患、知的障害を合併しない、強迫症状が中等度以上のものである。対象患者を12週間のfluvoxamineを用いた薬物療法、行動療法、プラセボ治療に無作為に割り付け、治療前後に臨床評価、数種の神経心理検査、Stroop課題等の賦活課題を用いた機能的MRI撮影を試行し、各治療前後における臨床症状、認知機能、脳機能画像上の変化について昨年度より対象者を増やし、昨年度とは異なる画像解析法を用いて検討した。 各治療前後の撮像は薬物療法群14人、行動療法群11人、プラセボ群7人で行い、YBOGSの総得点がそれぞれ27.9%,59.0%,11.0%改善し、それぞれで4名、11名、0名が治療反応群であった。Stroop課題下の画像で、薬物療法の治療反応群および行動療法群の各治療前後とプラセボ群の治療前後とをSPM8による2-way ANOVAを用いて解析・比較した。両群において、右のDLPFCで統制群との有意差が認められたが、行動療法群では右縁上回、上頭頂小葉、被殻、左中前頭回といった側頭、頭頂部位を中心に複数の部位で有意差を認めたのに対し、薬物療法群ではそれ以外の部位では有意差が認められなかった。DLPFCは実行機能や注意の制御に関連していると考えられており、既存の画像研究において、本疾患の病態生理との関連が示唆されており、本研究もそれを支持するものである。 また、行動療法は薬物療法に比してより広範な脳部位を変化させうるとも考えられるが、対象者数が少数であり、さらに、薬物療法群では症状の改善率が低く、今後は症例数を増やして他の賦活課題も用いて検討する必要がある。
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