研究概要 |
arcadlinはてんかん発作により海馬や大脳皮質などに誘導される神経接着分子である。arcadlin中和抗体がシナプス長期増強を阻害することから、arcadlinの発現は学習記憶のメカニズムと深く関わっていると考えられた(Yamagata et al,J Biol Chem,1999)。また、arcadlin KOマウスにおいてスパイン密度が増加することを既に見出している(Yasuda et al,Neuron,2007)。そこで、arcadlin KOマウスと正常マウスにおいて行動実験により学習記憶能力について比較を行ったところ、空間記憶に差異が生じることを予備実験により確認した。今後、例数を増やすことにより、詳細に検討していきたい。 強いてんかん発作により、arcadlinがスパインに誘導されると、arcadlinと細胞内において結合するTAO2βキナーゼを介してp38 MAPKが活性化し、N-cadherinをスパイン膜から内在化させ、スパイン密度を減少させる。そこで、arcadlinを強制発現したマウス海馬ニューロンにp38 MAPK阻害薬(SB203580)を前処置したものとしなかったもののスパイン密度を比較したところ、p38阻害薬処置群においてスパイン数は減少しなかった。最近の知見からスパイン数の減少は学習記憶能力の低下と関係していることが明らかにされており、難治性てんかん患者に対してp38阻害薬を投与することにより、難治性てんかんの合併症のひとつである学習記憶障害を予防する効果があることが考えられた(Sugiura et al,Neuroscientist,2009)。
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