研究課題
自閉症患者において、行動異常とともにスパイン(シナプス後部の樹状突起棘)形態やスパイン数の異常がみられる。結節性硬化症は自閉症を合併することが知られており、tuberous sclerosis complex(TSC)-1, 2の変異が発症要因である。TSCは低分子量G蛋白質rhebに対するGAP活性を持ち、TSCに変異が起こることにより、Rheb-mTORシグナルが活性化する。TSC変異動物Ekerラットにスパイン形態異常が起こることを、初代培養ニューロンにGFPを発現し樹状突起を可視化した実験系にて見出しているので、シナプスマーカーのひとつであるsynaptophysinにてニューロンを染色し、スパイン形成の差異を比較した。その結果、Ekerラットでは正常ラットと比べて単位長さあたりのsynaptophysin陽性スパインが有意に減少していた。mTORは蛋白質の局所翻訳に関与していることが知られているので、正常およびEkerラットのシナプトソーム分画を2次元電気泳動により解析した。さらに、スポットを切り出して蛋白質を抽出し、質量分析計を用いて正常ラットと比較してEkerラットで発現が増加しているペプチドのアミノ酸配列についてデータベース検索したところ、複数のミトコンドリア代謝酵素を見出した。正常およびEkerラット初代培養ニューロンのミトコンドリアをDsRed2-Mitoを強制発現することにより可視化し、樹状突起におけるミトコンドリアの分布量を比較したところ、正常ラットに比べてEkerラットではミトコンドリアが有意に増加していた。以上の結果からEkerラットにおいてミトコンドリア分布異常がスパイン形成異常に関与することが考えられた。
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http://jglobal.jst.go.jp/public/20090422/200901085228928457