女性の薬物依存症に特化した、適切な診断評価スケールの標準化を企図して本研究を開始している。平成22年度は、臨床的に最も汎用されているDSM-IVの診断基準を改訂し、女性の薬物依存症者の診断に信頼性と妥当性を有する質問紙を標準化し開発した。その過程では平成22年度にも引き続き日常臨床で女性薬物依存症者の治療経験が豊富な精神科医や嗜癖問題専門のカウンセラーと合同討議を行い、「性差」に特化したリスクファクターや、問題領域の設定を行い、評価尺度に反映させた。その結果、(1)薬物乱用から依存へと至る経過で、主として家族環境からの影響が大きいこと。(2)男性に比べて家族背景や配偶者との人間関係領域でストレスに曝されやすく、回復過程にも影響を与えうること。(3)薬物使用の結果の中毒性精神症状と、薬物使用に先行する抑うつ症状、トラウマ症状とが併存している。以上3点の女性例での特質を抽出することが出来た。 以上、研究経過の3年目で予定通り診断面接の質問紙を完成し、は臨床群、非行(少女)群、社会福祉施設群等々、多面的な臨床フィールドでデータの解析し、海外の研究成果を参照しつつ、日本の女性薬物依存者の特質を明らかにした。
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