研究概要 |
代表的な癌分子標的治療薬で血管増殖因子のヒト抗体であるBevacizumabが単独で抗腫瘍効果を発揮することが分かっているヌードマウス移植可能ヒト大腸癌株CoLo205をモデルとして、Bevacizumabの治療効果を現在最も癌の診断に頻用される糖代謝トレーサー2-deoxy-2-[18F]fluoro-D-glucose(FDG)で早期診断できるか否かに関する動物実験を行った。Bevacizumabは、腫瘍が生着して安定増殖し長径8mmになったヌードマウスに1,4,7,10,14日目に腹腔内投与され、長径・短径を観察して腫瘍増殖曲線を描いたところBevacizumab処理を行わなかったコントロール群に対して、腫瘍縮小は見られなかったが、増殖スピードの有意な低下が観察された。FDGのヌードマウスへの投与実験を、Bevacizumab処理開始1,4,7,10,14日目にコントロール群との比較として行ったところ、Bevacizumab処理群において、FDGの腫瘍集積性がコントロール群に対して増加するという結果が得られた。本結果は、現在広範に使用されている血管新生抑制薬を併用した化学療法において、FDGとポジトロンCTを使用した抗腫瘍効果判定において、実際の効果を反映せず注意を要する事を示していると考えられた。また、血管新生の抑制薬によりFDGの腫瘍集積が増えるという事は、血管新生抑制は嫌気的解糖を促進する可能性がある事を示唆しており、本件は腫瘍の治療による生化学的性格の変化があり、特殊環境下における腫瘍におけるエネルギー依存性が変化する事を初めて示した事となり、重要な知見が得られたと考えている。
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