研究概要 |
【研究の目的】血管内皮増殖因子であるvascular endothelial growth factor(以下VEGF)は悪性腫瘍の血管新生に関する重要な因子である.膵癌においてもVEGFの発現が肝転移の発現や予後と相関するとの報告も見られる.今回の研究の目的は静注ダイナミックCTでは一般的に乏血性腫瘍である膵癌の造影効果や造影パターンがVEGFの発現と相関があるかどうかを病理組織学的に検討した. 【研究の対象】2002年11月~2004年12月の間で,静注ダイナミックCTが施行され,病理組織学的に膵管癌と診断された23例(男性15例,女性8例,34~79歳)を対象とした.ダイナミックCTは16列マルチスライスCTにて撮像した.スライス厚は2.5mm.300mgI/mlの非イオン性造影剤100mlを3ml/sの速度で注入した。造影前,動脈優位相(30秒後),膵実質相(50秒後),後期相(95秒後)を撮影した.膵腫瘍部のCT値を各相で測定し,腫瘍のCT値/大動脈のCT値の比(tumor-aorta enhancement ratio)と腫瘍と周囲正常膵のCT値の比(tumor enhancement ratio)を測定した.切除された膵癌組織から免疫染色によりVEGFの発現の程度を評価した.ダイナミックCTのおける膵癌の造影パターンとVEG発現の程度との相関について統計学的に評価した. 【研究の成果】動脈優位相のおける膵癌の造影効果の程度とVEFGの発現の程度には有意な相関が見られた(P=.001).以上の結果よりダイナミックCTの動脈優位相における膵癌の造影効果を評価することで膵癌のもつ血管内皮増殖能を評価することが可能となり,治療方針決定や治療効果判定への臨床応用が期待できる.
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