研究課題
ラット心筋における虚血再還流モデルを用い、細胞外マトリックス糖タンパク質の一つであるtenascin C(TNC)の心筋虚血後の心筋間質での発現に影響を与えうる因子のひとつとしてのpostconditioningに関して検討した。Postconditioningは冠動脈閉塞解除時に再還流と閉塞を短時間に繰り返すことによりえられる。これにより再還流時の心筋障害を緩和することが示唆されている。TNCの発現の画像化の手段として、TNCに対する抗体をI-125で標識し(I-125-TNC)、その分布を検討することでTNCの発現を定量化した。30分虚血再還流モデルにおいて非虚血部に対する虚血部の集積比を再還流3、7、14日で定量化した。TNCは非虚血部では集積を認めず、虚血領域の中心部の約50-65%の領域に認めた。30分虚血後再還流3日では正常部に対する虚血部の集積比が3.50±1.38と高値を示し、7日後では2.34±0.41、14日後では集積がさらに低下し、1.91±0.17となった。一方30分虚血Postconditioning群では再還流3、7日後の虚血部の集積比はそれぞれ2.84±0.77、1.94±0.37と対照群に比し低値を示し、14日後では1.40±0.08とさらに低下した。従って再還流時にPostconditioningを行うことで、3、7、14日いずれもTNCの発現を抑制することが示され、虚血再還流後の組織再構築における過剰なTNCの発現が抑制された可能性が示唆された。
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