研究概要 |
目的:膝関節MRIの関節軟骨T2値評価における健常者の基本データを収集する。 方法:55例のボランティア症例について,膝関節の3T MRIを行い,読影者間および読影者内における再現性および関節の部位別のT2値の測定とそれに基づくT2-map作成を行った。使用装置はGE社製3.0テスラMR装置と膝関節専用の8チャンネルコイルを用いた。ボランティアはX線所見から軽度の変形性関節症がある群(mild OA group,15例,平均年齢46.9歳)とない群(healthy group,40例,平均年齢65.2歳)に分けた。大腿骨内側顆,外側顆の中心を通る矢状断面を選択し,T2 mapを作成した。大腿骨内顆下面と後面,大腿骨外顆の下面と後面,脛骨上面の計5カ所において,関節軟骨の全体を囲むROIを設定し,T2値の測定を行った。3人の読影者間でそれぞれ2回のROIの設定を行い,再現性(coefficient of variations,CV)を測定した。さらに部位別のT2値,OAの有無,年齢,症状(WORMAC score)との関連を検討した。 結果:mild OA groupとhealthy groupとの比較では,いずれの部位でも関節軟骨のT2値に有意差はなかった。年齢,症状との間にも相関はなかった。大腿骨内側顆,外側顆後面の関節軟骨は他の部位よりもT2値が高かった。これらの部位は荷重がかからないために,荷重が加わる下面の軟骨に比べて関節軟骨の水分が高く,T2値の上昇をきたす原因となっていると推測される。読影者間のばらつきは3.4~9,8%,読影者内のばらつきは4.2~14.3%で,特に脛骨側の関節軟骨において,ばらつきが大きい傾向があった。 結論:健常ボランティアにおいて,単純X線写真上の軽度のOA所見の有無は関節軟骨のT2値に影響しないことが示された。これは関節リウマチ患者における関節軟骨のT2値測定における基本データとして重要である。ただし,読影者間および読影者内でのばらつきが大きく,測定の精度を高める工夫が必要と考えられた。
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