研究課題
当初計画したとおり、アルツハイマー病の重症度の推移等の臨床経過と、辺縁系回路を構成するPapez回路およびYakovlev回路の拡散能の上昇、拡散異方性低下という拡散テンソル異常の程度との関連を解明する事を目的に、研究開始以降のべ約700例、2009年4月から2011年3月の期間では、約400例の症例の臨床所見、心理テスト、MRI通常画像、容積画像、拡散テンソル画像の検討を行った。拡散テンソル画像の解析により、アルツハイマー病では重症度に応じて、鉤状束および帯状束の拡散異方性の低下、拡散能の上昇がみられることを確認できた。現在比較的広く行われている側頭葉内側部の萎縮の程度を評価するVSRADによる解析と比較しても、上述の拡散異方性の低下、拡散能の上昇は、心理テストであるMMSEのスコアと良好な相関を示した。また、拡散テンソル画像の解析に際して、鉤状束の描出に用いる拡散異方性の閾値の選択により、拡散テンソルの測定値が影響を受ける事があきらかとなった。ただし、閾値の選択によってアルツハイマー病の重症度と拡散異方性、拡散能の関係は変わることはなく、一定の閾値を用いることで、測定値と重症度との関連は担保されることが判明した。群間の有意差は拡散異方性=0.15~0.2の閾値を用いたときに鋭敏に検出されることも明らかとなった。さらに、近年発達してきたVoxel based analysisの一種であるTBSS(Tract-Based Spatial Statistics)との整合性も示された。今後は、さらに多くの症例と、長い経過観察で、軽度の認知症状の段階で、今後の症状の増悪の可能性を予見できるような所見をテンソル解析で見いだしていきたい。
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