研究概要 |
研究計画に基づき過去の検査データから撮影条件および画像処理条件の最適化を行った.下肢動脈における閉塞動脈疾患でCTを施行した症例は年間170例に及んだ.これらの症例は64列CTにおいて検査を行った.撮影条件と造影剤注入条件を最適化し,画像処理によるサブトラクション・非サブトラクション両者の手法により血管内腔描出を試みた.これらの症例のうち34例にて狭窄病変に対する血管内治療の適応が確認され,血管造影が施行された.血管造影を標準手技として比較検討した結果,90%程度の正診率を得られることが確認できた.一致が得られなかった症例においては血管造影時に多方向からの観察,病変前後の血圧測定,血管内超音波検査などで確認をしたが,通常の血管造影では見逃される恐れがある病変がCTでは正しく描出されていることが確認できた. これらの結果をもとに基礎的検討を開始したが,320列CTが導入され検査の移行が想定されることより,血管ファントムによる320列と64列CTの違いをまず検証した.血管ファントムには25%刻みの狭窄を持つモデルを作成し,閉塞性血管疾患の際に使用される血管ステント(冠動脈用,末梢血管用)も用意し,ステントの違いによる描出の違いの評価も行えるように準備した.ファントムの撮影は静止状態と拍動の影響を考えた拍動下モデルにより撮影を行った.また,動きの間隔が一定でないこともあるため,不整脈モデルも用意しデータ収集を行った.データの詳細な検討は引き続き次年度以降に行うが,64列と320列では同一撮影条件においても画像の信号ノイズ比とスライスプロファイルに若干の違いがあることが確認され,320列では検出器中心に近いほどより高精度な画像が得られている可能性が示唆された.ただし,ヘリカルでの撮影を行うと両者に違いは生じないことも確認された.
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