研究概要 |
目的)心臓由来脂肪酸結合蛋白(H-FABP)は急性冠症候群の際、心筋細胞から血中に放出されることを利用し、急性虚血の診断に用いられている。昨年度、我々は、このマーカーが心筋障害早期から逸脱することを利用して、H-FABPを検出するアイソトープ標識の抗体を静脈内投与することにより、急性冠症候群のごく早期に直接心筋障害部位を検出できることを報告した。本研究の目的は、心筋虚血・再潅流ラットを用いてH-FABPの発現程度を従来行われている血流および脂肪酸代謝イメージングと比較することである。方法)抗体の標識は、抗H-FABP抗体にヨードジェン法を用いてI-125標識抗H-FABP抗体(antiHFABP)を作成した。ラットを用いて以下の3つのモデルを作成し、モデル作成後に^<99m>Tc-MIBI,^<123>I-BMIPPおよびantiHFABP標識抗体を投与した。(1)健常群(Sham)。(2)心筋梗塞モデル(INRG):開胸し左前下行枝を結紮し,再潅流しない。結紮1時間後にantiHFABPを静注。(3)虚血再灌流モデル:左前下行枝を結紮した後、20分後に結紮を解除し40分後にantiHFABPを静注する。(1)-(3)いずれのモデルも投与20分後にsacrificeし、心臓を摘出し凍結標本を作成。μ-イメージャを用いてオートラジオグラフィーを施行し、Vision^Rで集積程度(TUR=虚血領域/正常領域の集積)の定量測定を行った。 結果)各モデルのTURはSham, INRG, IRGモデルでそれぞれ、antiHFABP:1.09±0.069,0.22±0.073,3.04±1.53;MIBI:0.98±0.08,0.12±0.01,0.20±0.03;BMIPP:1.00±0.09,0.24±0.07,2.78±1.28であった。IRGモデルのTURは有意にSham, INRGより高値(p<0.05,0.01)であったが、同部位で血流は低下、脂肪酸代謝は有意に増加していた。 結論)antiHFABPが急性虚血再潅流モデルにおいて認められた虚血部位の高度集積に一致して血流は低下し、代謝は亢進していた。心臓由来の脂肪酸結合蛋白の一過性の発現増加が心筋脂肪酸代謝の亢進を促した可能性が考えられた。
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