今年度は、準備してきた各種X線光学素子、各種ファントームを用いて放射光単色X線による撮影システムに関する定量的評価、さらに小動物を用いた血管造影検査による医学的評価を実施した。今年度は、従来から医学イメージング研究に利用してきた放射光ビームライン改造が実施され新しいビームライン用X線分光器が設置されたこともあり、より高精度な撮影システム評価を行うことができた。X線吸収が特異的に大きくなる血管造影剤(ヨウ素、ガドリニウム)のK吸収端上側のエネルギーである33keVおよび52keVの二種類のエネルギーの単色X線に関する物理的特性(エネルギーバンド幅、X線強度、X線強度の時間的安定性)、各種X線光学素子と各種撮像系(X線CCD検出器とX線HARP検出器)を組み合わせて用いた場合に得られる単色X線画像の空間分解能、濃度分解能、空間的一様性(歪み)などに関する知見を得ることができた。また、それらの知見を元に小動物の血管造影検査を行ない、得られた画像の物理的特性評価(S/N、被曝線量と画質の関係など)を行うとともに、今後の研究対象疾患として抹消循環系疾患、呼吸器系疾患、腎臓系疾患などを選定して医学的見地からの画質評価も行った。X線HARP検出器を用いた微小血管系造影検査では、被写体透過後で検出器に入射するX線光子数の少ない領域の描出に特に優れていることを実証できた。これらの研究成果により、次年度に向けた研究方針を具体的に決めることができた。
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