ポジトロン断層撮影法(PET)での遺伝子改変マウスなど小動物対象の研究の一つとして、脳神経疾患の病態・治療研究を目的としたリガンドの、動脈血中リガンド濃度変化(pTAC)とともにPETデータ解析を行う生理学的パラメータの定量法の確立が必要である。 今年度は採血量に限界があるマウスにおいて、動態解析による定量が十分可能な入力関数にの測定方法の開発を、採血回数・採血量など考慮しつつ若年健常マウス(n=6)を対象として行った。リガンドはアルツハイマー病(AD)診断で最も普及したアミロイドβペプチド(Aβ)に親和性を持つ^<11>C-PIBとした。麻酔下で動脈採血のため大腿動脈にポリエチレンチューブを挿入した。microPET Focus220にて^<11>C-PIB約1mCi(0.2ml)尾静脈投与後90分間PET撮像し、その間に12-14回、10-30μLの採血を行った。血漿分離を行いマイクロピペットで血漿量・ガンマカウンターで放射能、またradio-HPLCによる代謝物分析を行い、pTACを求めた。PET画像とMRIとの重ね合わせで脳の関心領域(ROI)を設定して組織濃度変化(tTAC)を求め、動態解析にてROIでの分布容積V_Tを求めた。6匹中2匹は、4週間あけて再実験をし、再現性についても検討した。V_Tは18-29%程度COV、5-27%のintra-subject variabilityがあるものの、マウスでpTACを用いた動態解析が可能なこと、同一個体で2回実験が可能なことが示せた。ばらつきの原因は、数μLの血漿量定量にあることが考えられた。AD研究では病態モデルマウスが開発されていて、in vitro研究との組み合わせでAβイメージング研究により定量的なアプローチが可能な道が開けてきた。
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