研究概要 |
放射光由来の単色X線を用いた放射光血管造影システムに、高感度のHARP受像管を用い、希釈された造影剤を使用しても、臨床的に有用な血管造影画像を得ることが出来るかどうか検討した。放射光由来の高輝度単色X線は直進性と解像度(26μm/pixel)に優れている。 HARP撮像管は、光を電気に変換する光電変換膜に特殊材料を用い、なだれ増倍現象で信号を増幅することにより、超高感度化を得る。撮像時間は30msec。対照としてCCDカメラを用いた(撮像時間:150msec)。32%のイオン性ヨード造影剤を用いた。各画像は256階調のグレイスケールに変換し、その階調差(差分値)で検討した。 (1)invitro実験(mock実験):24Gの静脈カテーテル外筒32%,16%,8%,4%,2%,1%の各濃度の造影剤入れ、放射光由来単色X線で撮像し、CCDおよびHARP受像管で比較した。256階調において、背景値と10の差があれば血管と認識できることが判明した. (2)invivo実験(ラット下脚放射光血管造影):Wistarラット(n=20、各群n=5)を用いた。32%,16%,8%,4%の各濃度の各希釈率の造影剤を1m/secで2秒間(計2ml)注入した。HARP管の各濃度でのラット下肢血管造影のgray scale差分値は、それぞれ4%:14+/-12,8%:22+/-10,16%:25+/-11,32%:40+/-10であった。血管としての判別は、4%から可能であったが、臨床的に有意な血管造影を行うことができる造影剤希釈濃度は、8%であった。 これにより、受像管にHARP管を用いると造影剤腎症の発生は1/4に減少し、腎障害を有する患者でも十分な造影剤を用いた診断と治療が行われることが示唆された。
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