肝細胞癌に対する経動脈的塞栓術は今日の我が国においては比較的確立された治療法となっている.一方で、欧米先進国では本治療法は我が国とは異なる物質を用いの治療が主流である.この治療成績は現在の我が国のものと比較して決して優れているとはいえないのが実情である.しかしながら我が国では臨床使用できない新型の塞栓物質の研究は盛んであり、従来の我が国の治療法とこれらの新物質との対比・融合によりよい方向性が得られるのではないかと予想される.本年度は従来より用いられていた液体塞栓物質であるn-butyl cyanoacrylate、lipiodol ultra fluid、粒状塞栓物質であるゼラチンスポンジとの対比としてエチレンビニルアルコールという液体塞栓物質を用いた塞栓並びに加圧塞栓の実験成果を報告(第38回日本IVR学会、Cardiovascular and Interventional Radiological Society of Europe 2009)した.この報告の中ではエチレンビニルアルコールの加圧注入により動脈からの塞栓物質の注入であるが、肝類洞を介して腫瘍周辺の門脈域までの塞栓の可能性が示唆され、根治的な肝癌の塞栓術(Chemical segmentectomy)の可能性が見出された.また、臨床データから肝動脈塞栓術時に必要な肝動脈解剖については第69回日本医学放射線学会ならびに9th Asian Pacific Congress of Cardiovascular and Interventional Radiologyに報告予定となっている.この内容では肝内の動脈間の吻合の存在とその部位の検討により、肝動脈塞栓術に際して限局的に肝腫瘍の領域のみを根治的に塞栓するための肝動脈の解剖学的な特徴を示している.
|