研究概要 |
肝動脈塞栓術は肝細胞癌の治療として確立している方法論の一つである.しかしながら術後の局所再発率も少なくなく,画像診断からの解析によると腫瘍辺縁からの再発が主であることが判った.肝癌の辺縁域は通常の状態では動脈血流支配であるものの,塞栓物質により動脈血が遮断されてしまうと容易に門脈血流が逆流し,壊死に陥らない部分が残存してしまうことによりこのような辺縁再発がおこると考えられた.今回の実験では液体の塞栓物質を用いることで腫瘍辺縁域まで強力に塞栓をすることで,再発することなく,腫瘍全体が壊死に陥るようにする方法を探ってきた.これまでの実験でエチレンビニルアルコールを強圧で注入することで良好な塞栓範囲を得ていたが,肝内の動脈間の吻合枝によって意図しない領域までの塞栓を生じてしまう事象が観察された.本年は画像上でこの吻合枝の状態を把握する方法を検討し,血管造影補助下のCT像により動脈間の吻合枝を観察することに成功した.動脈間架橋構造は非常に微細な構造であり,これまでも偶然観察しうることはあったものの薄層CT像を用いることにより詳細な解析が可能となった.血管造影下CTは通常の造影CTよりも高濃度の造影剤を使用しており,かつCT像の薄層化解析を同時に行うことによりこれまでには不可能と考えられていた微細な血管構造を解析し得た.このことは肝動脈塞栓術をより正確で効果的なものとするための必要条件の一つであると考えられた.現在は実験により得られた樹脂塞栓物質の圧入による塞栓効果についての論文と肝動脈間架橋構造についての論文を執筆中である.
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