【目的】本研究の目的は、大動脈ステントグラフト治療において綿密な術前計画と術前シミュレーションを展開するための手法を確立することにある。そこで造影CTデータを使用した血管モデルを作成して術前シミュレーションを行い、最適なステントグラフトの形態を模索し正確な留置を目指すことを目論んだ。 【方法と成績】まず本研究を遂行するにあたり、テルモ社との共同研究の締結および施設内倫理委員会への申請を行い承認を得た。術前に撮像された造影CTのDICOMデータを元に、テルモ社メディカルプラネックス内で画像処理を行い光造形装置にて血管モデルを造形した。遠位弓部大動脈瘤など5例を対象として血管モデルを作成した。血管モデルはシリコン樹脂性のソフトタイプと固形樹脂を使用したハードタイプを作製し、おのおのの利点欠点を評価し最終的にハードタイプのモデルを本研究では採用した。既存の手法にて作製したステントグラフトおよび新規作成した血管モデルを用いた術前シミュレーションを行い、その結果を元にステントデザインを最終決定し実際の留置手技を行った。全例で概ね予定位置に留置され、弓部分枝など温存すべき血管には影響がみられなかった。 【まとめ】ステントグラフト治療における術前シミュレーションをCTデータを用いた正確な血管モデルを利用して行うことにより、ステントグラフトのデザインの決定と正確な留置手技が可能となった。今後はこの血管モデルを用いたシミュレーションシステムの完成度を高め、仮想空間と現実のシミュレーション結果を対比し、さらに実際の臨床結果をフィードバックさせることにより、より完成された実際的な術前シミュレーションが可能になると予想している。
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