平成20年度に開始した臨床CT3次元画像データの蓄積は現在も継続的に行っており、当該研究の目的である掲示差分画像作成のため、京都大学医学部付属病院で施行された全CT検査のデータ蓄積とその保存管理が行われている。これにより1年後に2回目の経時変化観察のためのCT検査を施行した患者画像データを臨床検討に用いることができるようになった。 次に臓器の経時的な変化をとらえるため、前後2回の3次元CT画像を重ね合わせる必要がある。まず一般的な剛体重ね合わせを用いて試行したが、2回のCT検査での体位の変形が大きく差分画像に膨大なエラーが生じるため、経時差分画像作成の目的には使用不可能であることがわかった。そこで非剛体の変形を加える重ね合わせ法を用いた。画像重ね合わせソフトとしてカナダTomographix社製の非剛体重ね合わせエンジンを用いた。まず2回の肺野CT画像での重ね合わせ精度の検証では、剛体重ね合わせで見られた大きな重ね合わせ誤差が著明に減少し、2回のCT画像を並べての変化観察には有効と思われた。しかし差分画像を作成すると微細な肺野血管の位置ずれによるエラーが多数見られ、重ね合わせ精度の一層の向上が必要なことがわかった。 今回、非剛体重ね合わせ技術を肝癌検出のための造影ダイナミックCT画像にも適応し、1回の検査で撮像された単純CT、早期像、晩期像のそれぞれを重ね合わせた。剛体重ね合わせでは差分画像に大きなエラーが生じたが、非剛体重ね合わせを用いた差分画像では誤差が著明に減少した。非剛体重ね合わせと差分画像の作成が肝臓癌の早期検出に有効である可能性が示唆された。 今後、重ね合わせソフトの精度向上と、臨床利用法の開発および臨床有用性の検証が望まれた。
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