研究課題
これまでは、放射線、特に低線エネルギー付与(LET)放射線に対する固形腫瘍の感受性は、照射前および照射中の腫瘍内酸素分圧に大きく影響されるとされ、多くの研究もなされてきたが、照射後の腫瘍内酸素分圧にも影響されることが明らかとなり、in vivo腫瘍生物学上の新知見となった。しかし、これら照射前・中・後の腫瘍内酸素分圧の影響は、高LET放射線照射に際しては、相当程度減弱されることも明らかとなった。照射中の低酸素状況の維持がもたらす照射線量率低減に起因する感受性低下の抑制効果、および急性低酸素領域を解除するニコチンアミドの照射前投与がもたらす照射線量率低減に起因する感受性低下の増強効果は、ガンマ線照射および腫瘍内全腫瘍細胞においての方が、加速炭素イオン線照射およびQ腫瘍細胞においてより顕著であった。低酸素細胞放射線増感剤のミシニダゾールの照射前投与がもたらす照射線量率低減に起因する感受性低下の抑制効果は、ガンマ線照射およびQ腫瘍細胞においての方が、加速炭素イオン線照射および腫瘍内全腫瘍細胞においてより顕著であった。よって、高線量率照射と同様に低減線量率照射においても、腫瘍内の酸素化状況の操作は腫瘍の放射線感受性、とくに低LET放射線のガンマ線に対する感受性に影響を与えることが明らかとなった。最後に、局所治療のガンマ線照射に、腫瘍内の酸素化状況の操作を加え、局所効果と同時に肺への遠隔転移への影響を解析した。腫瘍内の酸素化状況の操作として、上記のニコチンアミドの照射前投与、慢性低酸素細胞分画を低下させるとされる低温度温熱処置の照射前処置を施行した。その結果、肺への転移結節数は、ニコチンアミドの照射前投与で顕著に低下し、照射しない場合でも低下させた。即ち、急性低酸素細胞分画を解除する処置には、局所腫瘍からの遠隔転移を抑える潜在力があることが明らかとなった。
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