研究課題
我々は今までの少数例の臨床研究から、放射線治療開始後、数日以内に、患者血漿中cell-free DNAが増加した後、漸減することを見出した。そこで、「放射線感受性が高い腫瘍ほど治療早期から腫瘍細胞が崩壊、これに伴い腫瘍細胞中のDNAが血漿中に流出、ついで早期に減少、消失していく」という仮説を立て、血漿中DNAの治療開始後の変動の解析によって、放射線治療の効果を早期に予測する方法を検討している。21年度までの研究で、ヒト腫瘍モデルマウスを用い、血漿中ヒトDNA量が放射線による抗腫瘍効果と相関していることを示した。このことから血漿中腫瘍細胞由来DNAが放射線治療効果を予測する新たな判定法となりうることが示唆された。以上の結果をもとに本年度は最終年として放射線治療を受ける患者さんから血液検体を採取し、分析を行った。当大学附属病院倫理委員会での承認後、患者さんにインフォームドコンセントを行い、血液検体を採取した。頭頸部癌17名、子宮癌4名、計21名の患者さんのご同意が得られ、採血を行った。採血は放射線治療前、開始後3日、以後一週間に1-2回、放射線治療が終了するまで継続した。遠心分離により血漿を得て、解析まで冷凍保存をした。DNAの抽出はPromega社Maxwell 16自動抽出装置と試薬LEV blood DNA kitを用いた。定量的PCRには蛍光標識probe (applied biosystem社)とprimerを用い、ヒト特異的コントロール遺伝子(beta-actin)をPCR法で定量した。機器はQiagen社のRoter-geneQを使用した。使用した血漿量から血漿量1mlあたりのDNA量を算出した。現在21例中、15例の抽出が終了している。DNA抽出と定量的PCRはほぼ全例で可能であったが、2例で全くDNAが抽出できなかった。今後、血漿サンプルの解析を引き続き行い、患者血漿中cell-free DNAと放射線照射による治療効果との比較を行う予定である。
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