定位照射で用いられる大線量1回照射と中線量の少数回分割照射の線量を比較あるいは換算する場合には、便宜的にLQモデルからの数式を利用している臨床家が多いが、その妥当性について、今年度は培養細胞とスフェロイドを用いて検討した。V79とEMT6細胞に対して0〜12Gyを1回、4〜5Gyを2〜3回照射し、コロニー法によって生存率を算出した。単回照射の結果からα/β値を算出し、分割照射の生存率が単回照射の何Gyのものに相当するかを求めるとともに、LQモデル数式より算出した計算値と比較した。V79スフェロイドにおいては、適当な分割照射間隔を求めた後、0〜26Gy、1回、5〜12Gy、2〜5回の照射を行った。スフェロイドをトリプシンにて分解した後、コロニー法によって照射後各群の生存率を算出し、培養細胞と同様の検討を行った。実験から算出された少数回分割群の単回照射等生物効果線量とLQモデル式から導いた等生物効果線量と比較した場合、LQモデルから求めた計算値は、V79、EMT6細胞では実測値より6〜19%小さかった。V79スフェロイドにおいても計算値は実測値よりも18〜30%小さかった。分割回数が増えるほど、計算値と実測値の解離が大きくなる傾向が認められた。これらの結果から、少数回分割照射線量の1回大線量照射線量への換算については、LQモデルより算出した値は、実測値より過小評価されると考えられた。引き続きマウス腫瘍を用いて検討を行っているところである。
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