大線量1回照射と中線量の寡分割照射の線量を比較・換算する場合に、便宜的にLQモデル数式を利用することの妥当性について、今年度はマウス腫瘍を用いて検討した。EMT6腫瘍を移植したBalb/cマウスに対して、0~25Gyを1回、あるいは4~13Gyを2~5回全身照射を行い、in vivo-in vitro法によって生存率を算出した。培養細胞に対する単回照射の結果からα/β値を算出し、分割照射の生存率が単回照射の何Gyの生存率に相当するかを求めるとともに、LQモデル数式より算出した計算値と比較した。分割照射の間隔は4時間とした。照射後EMT6腫瘍を切除し、ミンチとトリプシン処理にてsingle cellに分解した後、コロニー法によって各群の生存率を算出した。算出された寡分割群の単回照射等生物効果線量とLQモデル式から導いた等生物効果線量と比較した場合、LQモデルから求めた計算値は実測値より20~40%小さかった。分割回数が増えるほど、計算値と実測値の解離が大きくなる傾向が認められた。これらの結果から、寡分割照射線量の1回大線量照射線量への換算については、LQモデルより算出した値は実測値より過小評価されると考えられた。この乖離については、培養細胞よりもマウス腫瘍においてさらに大きくなった。 さらに次の実験として、種々の線量を2~5回に分割して照射を行い、その効果を総線量とbiologically effective dose (BED)に対して検討した。分割照射の効果は、分割回数にかかわらず、総線量に対してほぼ直線上に乗ったが、一方BEDに対してプロットした場合は、直線から乖離した。このことより、in vivoの腫瘍に対する反応を見る場合には、BEDは不適切であることが示された。そこで、LQモデルに代わる適当な換算式を模索したが、multi-targetモデルを用いると1回高線量の場合には、LQモデルよりも実際の効果に近づくことが示唆された。
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