研究課題/領域番号 |
20591503
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
原田 聡 岩手医科大学, 医学部, 講師 (20244931)
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研究分担者 |
世良 耕一郎 岩手医科大学, 医学部, 教授 (00230855)
増田 友之 岩手医科大学, 医学部, 教授 (10199698)
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キーワード | マイクロカプセル / 放射線 / Drug Delivery System(DDS) / PIXE |
研究概要 |
放射線照射によって、抗がん剤を放出するマイクロカプセル開発に向け、1)マイクロカプセル内容放出機構の改善、2)マイクロカプセル皮下注時の抗腫瘍効果と副作用軽減に関して研究した。結果以下に示す成果を得た。 (1)マイクロカプセル内容放出機構の改善: ヒアルロン酸-アルギン酸をFe,Ca重合した従来のマイクロカプセルに、過酸化水素水を添加した。結果、(1)過酸化水素水が放射線照射時に、Fenton反応により、Fe^<2+>からFe^<3+>に効果的に変換すること、(2)Fe^<2+>がアルギン酸ポリマーを形成するが、Fe^<3+>アルギン酸ポリマーを形成しないことの上記2点により、放射線照射時に、アルギン酸ポリマーの破綻が起き、放射線照射によるマイクロカプセルの効果的な内容放出が起きることを明らかにした。これにより、放射線照射2Gy時の放出率は、67.3±3.2%から、82.1±4.3%に有意に上昇した。 (II)マイクロカプセル皮下注時の抗腫瘍効果と副作用軽減: マイクロカプセル10億個(総カルボプラチン10μg含有)を、マウス左下腿に移植したMM48腫瘍周囲に皮下注し、2Gy照射時のカルボプラチン腫瘍内濃度を、PIXE法により測定した。その結果、照射1時間後の腫瘍内濃度が、従来の2.4μg/gから3.4μg/gに上昇した。本濃度は、カルボプラチンの抗腫瘍効果を示す有効濃度3.0μg/g以上であり、実際の癌治療に有、効であることが示唆された。さらに、この薬剤濃度上昇は、マイクロカプセルの殻からの持続的放出により、照射3日後までも持続することが明らかとなった。実際の抗腫瘍効果を腫瘍径を毎日測定することにより計測した。放出された薬剤と放射線の相乗効果により、抗腫瘍効果が高まることが実証され、カプセル化しなかった薬剤単独よりも有意に作用が長期化した(P<0.05)。また、副作用を、1)マウスの毛羽立ち、2)体重減少、3)死亡の3点から計測した結果、副作用が有意に低下した(P<0.05)。
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