研究課題
放射線照射により破裂し、抗癌剤を放出するマイクロカプセルに関し、以下の改良点を加えた。すなわち1)マイクロカプセルの微細化、2)CT画像による体内動態の可視化、3)アスコルビン酸を用いたカプセル破裂率の改善の3点である。1)マイクロカプセル微細化:従来のアルギン酸ビアルロン酸-抗癌剤混合溶液に、アスコルビン酸を加え、カプセル混合溶液を作成した。本混合溶液を超音波破砕装置で、従来のCa^<2+>混合溶液にFe^<2+>を添加した混合溶液中にスプレーする他、今回、Ca^<2+>,Fe^<2+>混合溶液にも超音波振動を加え、カプセルを微細化した。結果、カプセル径が1.2±0.3μmに微細化され、静脈注射時でも、網内系への捕捉が激減、腫瘍への集積が増強した。2)CT画像による体内動態の可視化:今回カプセルに加えたFe^<2+>重合が、放射線を吸収した結果、カプセルがCT画像でも検出可能になり、カプセル動態がCTにより、非侵襲的に観察できるようになった。3)アスコルビン酸による破裂率促進:アスコルビン酸が、放射線照射に伴って生じるラジカルに反応し、H_2とO_2を発生することを明らかにした。結果、放射線照射によるH_2とO_2発生に伴うカプセル内圧上昇により、放射線によるカプセルの破裂が有意に増加した。
2: おおむね順調に進展している
P-selectinの抗原抗体反応を用いた、静脈注射されたマイクロカプセルの放射線照射部位への集積は平成22年度ほぼ達成していたが、1)カプセル径が大きく塞栓を形成しやすいこと、さらに2)放射線によるカプセル抗がん剤放出も、従来の過酸化水素水を用いた破裂と抗がん剤放出では、過酸化水素による血管内皮障害が起きる、の2点から実用的ではなかった。今回、カプセルの微細化と、アスコルビン酸を用いた生体に安全な放射線誘起性抗癌剤放出法が確立したため、ほぼ実用段階となったため。
平成23年度に達成した、微細化され、アスコルビン酸による安全な抗がん剤放出を持つマイクロか用いて、P-selectinの抗原抗体反応を用いた、静脈注射されたマイクロカプセルの放射線照射部位への集積、抗腫瘍効果の増強、抗癌剤副作用軽減を研究する。
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Int.J.PIXE
巻: 21 ページ: 30-36