CIA及び実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)での低線量放射線照射の改善効果を確認すると共に、制御性T細胞(Treg)細胞とTh17細胞の変化を詳細に検討した。その結果、II型コラーゲン誘発性関節炎(CIA)及び実験的脳髄膜炎モデルに対し、いずれも低線量(0.5Gy)の全身照射は発症率、病態スコアー等を改善、またTNF-α、IL-6等の炎症性サイトカインの上昇を抑制した。さらに、照射群に於いては、有意なTreg細胞の増加を認めた。さらに、これまでの低線量γ線照射の各疾患モデルの病態改善メカニズム解明を目的とし、病態発症に関与する感作T細胞による組織傷害(遅延型過敏症反応;DTH)、および抗体産生に対する低線量γ線の影響を検討した。その結果、DTHモデルマウスにおいては、重症度の軽減、病態形成に関与するサイトカイン(IFN-γ、TNF-α、IL-6)の産生抑制、Tregの割合増加を認め、DTHの抑制が各疾患モデルの病態改善に寄与する可能性が示唆された。一方、オボアルブミン(OVA)により感作したマウスに低線量γ線を照射したところ、現在までに、IgG抗体およびIgE抗体の産生が感作後長時間持続することが明らかとなり、低線量γ線照射によりB細胞活性はむしろ活性化が持続することが示された。そのため、各疾患モデルにおける自己抗体産生の低下には、γ線の直接作用ではなく、Tregのような間接的に抗体産生を抑制する機構の関与が示唆された
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