研究課題/領域番号 |
20591508
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研究機関 | 独立行政法人放射線医学総合研究所 |
研究代表者 |
馬場 雅行 独立行政法人放射線医学総合研究所, 重粒子医科学センター, 課長 (00143305)
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研究分担者 |
中嶋 美緒 独立行政法人放射線医学総合研究所, 重粒子医科学センター, 医師 (30422231)
野村 文夫 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80164739)
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キーワード | 炭素イオン線治療 / プロテオーム解析 / ペプチドーム / 非小細胞肺癌 |
研究概要 |
前年度検出された2861Daのピークと7738Daのピークについて更なる検討を行った。AutoflexII-TOF/TOF MSを用いたタンデムMS解析では2861Daはフィブリノゲンα鎖の断片と同定された。2861Daのピーク強度と凝固因子活性の関連について、2861Daペプチドピークの高かった3例、低かった4例において第II、V、VII~XIIの8種類の凝固因子活性を測定したが、通常検査における正常範囲内での変動しか確認されず、有意な変動は確認されなかった。従って、このペプチドの産生においては特定の凝固因子の変動が関与しているのではなく、炎症等の急性期反応によって複数の凝固因子が同時に変動している可能性が考えられた。また、全36例中、2861Daのピーク強度が2倍以上上昇していた症例は7例認められたが、その中には照射後再発が確認された4例中3例が含まれていた。近年、フィブリン分解産物が癌の浸潤・転移を促進する機能を有するという報告もなされていることから、このピークの変化は生体の反応だけではなく、腫瘍の反応を反映している可能性も考えられた。一方、7738Daのピークに対して、抗体2種類を用いた免疫沈降法で確認を行ったところ、2種類の抗体それぞれの溶出液で7738Daのピークが確認されたため、同ペプチドはアポリポプロテインA-IIの断片ペプチドであると考えられた。アポタンパク質は腫瘍との関係は近年報告されつつあるが、放射線照射の関係についての報告はこれまでになく、新しい機能の可能性を含め、次年度の検討課題である。
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