平成20年度においてこれまでに研究・報告してきた、脾細胞を用いた移植免疫操作のうち、近年報告されている間葉系幹細胞の免疫誘導に関する知見を応用し、いまだに我々が解消できなかったGVHD等の問題点をクリアできる可能性を追求した。これまでの成果としては次の2点が挙げられる。1. 間葉系幹細胞の分離精製方法の確立:CD4+CD25+アイソレーションキットおよびヘマトポイエティックセルキットの導入により、それまでガラス板法では長時間の培養が必要で、かつコンタミネーション等の問題もあり、細胞の継代が困難であった間葉系幹細胞の分離精製が可能となった。また細胞採取量も格段に向上した。これを用いて間葉系幹細胞と骨髄細胞の混入移入によるキメラを作成し、課題となっているGVHDの発生を含めて現在慎重に経過観察中である。また皮膚移植を行いキメラ成立後のdonor-specific toleranceの確認も併せて施行している。これから順次FACSおよび混合リンパ球培養を用いたキメラの確認を施行する予定である。2. カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校附属病院研修 : 移植外科においてキメラ成立の条件を協議検討し、研究方針の有用性を確認した。我々が行っている脾細胞を混入するアイデアに共感してもらい、今後小腸移植モデルを導入する際にその技術指導・協力が得られる同意を得た。今後の動物モデルを進ある上で非常に有用であったと考えられる。
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