平成21年度において、これまでに研究・報告してきた、脾細胞を用いた移植免疫操作のうち、近年報告されている間葉系幹細胞の免疫誘導に関する知見を応用し、いまだに我々が解消できなかったGVHD等の問題点をクリアできる可能性を追求した研究を継続した。今年度の成果としては次の点が挙げられる。 1.脂肪細胞由来の幹細胞の分離精製に成功した。すなわち脂肪を採取し、コラゲナーゼを用いて分離した後、IMDA培地で継代培養することにより幹細胞を生成した。これを脾細胞に置き換えることでより簡便な免疫寛容誘導法の確立の可能性を模索し、現在キメラが成立する条件を検討しているところである。骨髄細胞との幹細胞の混合比率を変えたグループを作成し皮膚移植、MLRを用いてキメラ成立の確認作業を継続している。 2.脂肪細胞由来の幹細胞から軟骨細胞への分化を確認した。これにより脂肪細胞由来幹細胞のポテンシャルを確認できた。これを骨髄細胞に分化させる条件を模索中である。 本研究により、骨髄細胞を用いないキメラ作成の可能性が示唆されるもので、非常に重要な知見であると考えられる。臨床応用を見据えた意義も高く、免疫寛容の誘導法の確立に向け研究を継続している。
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