平成22年度において、これまでに研究・報告してきた、脾細胞を用いた移植免疫操作のうち、近年報告されている間葉系幹細胞の免疫誘導に関する知見を応用し、いまだに我々が解消できなかったGVHD等の問題点をクリアできる可能性を追求した研究を継続した。今年度の成果としては次の点が挙げられる。 1.脂肪細胞由来の幹細胞の分離精製に成功した。すなわち脂肪を採取し、コラゲナーゼを用いて分離した後、IMDM培地で継代培養することにより幹細胞を生成した。これを脾細胞に置き換えることでより簡便な免疫寛容誘導法の確立の可能性を模索し、現在キメラが成立する条件を検討しているところである。骨髄細胞との幹細胞の混合比率を変えたグループを作成し皮膚移植、MLRを用いてキメラ成立の確認作業を継続している。しかしながら、この脂肪細胞由来幹細胞のサイズが大きいために肺塞栓を生じることが判明した。この幹細胞投与に於ける至適調整濃度が未だに決定されていない。腹腔内投与など、投与経路も模索している状況である。 2.一方、脂肪細胞由来の幹細胞をConcanavalinAによる劇症肝炎誘発マウスに投与し、生存延長効果を見いだした。この幹細胞による生存延長効果は投与量依存であることも確認された。これにより脂肪細胞由来幹細胞の新たな臨床応用の道を開くことができる可能性が示唆された。本研究は平成23年5月にChicagoで開催されるDigestive Disease Weekのポスターセッションに採択され、Poster of Distinctionという分野に選出された。今後この脂肪細胞由来幹細胞を他の細胞に分化誘導させる実験系を考慮中である。
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