研究概要 |
低酸素応答因子(HIF)は様々な血管新生因子や細胞遊走因子を誘導する転写因子であり、強制発現により成熟した血管の誘導が可能であると考えられるため,難治性虚血疾患に対する血管新生療法への臨床応用が期待される,なかでもHIF-2αはHIF-1αに比べ周囲の酸素濃度の影響を受けにくく、正常に近い組織酸素濃度下において安定であることから、確実な血管新生効果に結びつく可能性がある。培養細胞を用いた実験で乳癌抑制遺伝子Int6をRNA干渉により抑制するとHIF-2αが誘導されることから,我々はマウス下肢虚血モデルを用いてInt6を抑制することにより虚血組織において内因性HIF-2αが増加し,成熟血管が増生、下肢血流が回復すると予想し実験を行なってきた.これまでの結果として,マウス下肢虚血作成時にInt6 siRNA発現プラスミドを筋注し、4週間レーザードプラー血流測定,虚血症状のスコアリングを行なうと,血流測定ではInt6抑制群の血流回復が良好であり、スコアリングでもInt6抑制群で虚血による組織のダメージが少なかった.昨年度はその機序の解明として,培養筋芽細胞中の遺伝子、蛋白解析を行なった。筋芽細胞へInt6 siRNAプラスミドを導入すると,Int6 mRNA及び蛋白の抑制に伴って,HIF-2α蛋白の増加が認められた.この結果は,筋芽細胞へのプラスミドベクターを用いたHIF-2α強制発現実験系でも同様の結果であった.また,筋芽細胞においてInt6を抑制すると,bFGFやPDGF-Bなどの血管新生因子群の遺伝子発現が有意に促進された。今年度は,論文作成、投稿と平行し、マウス下肢虚血筋より作成した標本から、筋組織の血管密度,成熟血管数の免疫染色を行い、引き続き解析中である。
|