研究課題/領域番号 |
20591522
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
趙 向東 京都大学, 医学研究科, 助教 (00444464)
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研究分担者 |
藤永 卓司 京都大学, 医学研究科, 助教 (00444456)
陳 豊史 京都大学, 医学研究科, 助教 (00452334)
板東 徹 京都大学, 医学研究科, 准教授 (20293954)
伊達 洋至 京都大学, 医学研究科, 教授 (60252962)
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キーワード | 外科 / 移植・再生医療 / トランスレーショナルリサーチ / 臓器保存 |
研究概要 |
平成21年度に引き続き、以前の実験で得られた至適灌流条件と冷保存時間で、ET-Kyoto液(ET-K)による移植グラフトの保存効果と作用機序を検討した。対照として臨床で頻用されるUW液、HTK液と比較・検討を行った。 1. ET-Kによる腎臓保存効果の検討 ラットの腎臓をET-K、UW液、HTK液中で24時間保存後に腎移植を行った。ET-KとUW液24時間保存後全例生存し、HTK群より生存率は有意に高かった。組織中ATPとEnergy chargeはET-KにおいてUWと有意な差を認めなかったが、HTKより有意に高値であった。HTK群と比べET-K群とUW群では移植1、3日後の血中creatinineとBUN値が低く腎障害が軽微であった。再灌流3時間後のHE染色において尿細管傷害の抑制が認められ、TUNEL染色ではApoptosisが少なかった。また、移植後14日目におけるMasson's trichrome染色においてグラフトの線維化がET-K群とUW群で同様であることが示された(HTK群は生存例なし)。Real-time RT-PCRでは細胞接着分子ICAM-1 mRNAの発現量がET-K群とUW群でHTK群と比べ抑制された。以上の結果から、ラット腎保存に関してET-KはHTK液より優れた効果を示し、UW液と同等の効果を示すと考えられた。ET-Kは新たな腎保存液となり得る。 2. ET-Kによる心臓の保存効果の検討 ラットランゲンドルフ心臓灌流モデル及びラット心臓移植モデルを使って検討した。摘出したラット心臓をET-KとHTK液に6時間保存後、ランゲンドルフ装置に取り付け、37℃のKrebs-Henseleit bufferが60分間再灌流した。左室機能(心拍数、最大左心室圧、心筋仕事量)を測定した。再灌流の60分後に、ET-K群とHTK群は左室収縮能差がなかった。さらに、ラット心臓移植モデルで、18時間保存後、移植後グラフトの生存率は100%で、心臓に対して、良好な保存効果を示した。 以上の検討により、胸腹部多臓器が同一臓器保存液で灌流後冷保存が可能になれば、ハーベスト手技の簡素化と効率化、迅速な多臓器冷保存技術によりドナー臓器の機能保存効果の向上と移植医療コストの軽減が期待できる。
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