研究課題
【研究目的】膵島移植の「長期成績(遠隔期でのインスリン離脱率)の改善」を目指し研究を行った。【研究方法および研究結果】ラパマイシンは膵島移植後に用いられる中心的免疫抑制剤であり、その薬理効果はmammalian target of rapamycin (mTOR)阻害剤である。平成20年度の研究報告ではin vitroでの解析により1ng/mlおよび10ng/mlのラパマイシンによりマウス膵島を処理した結果、膵島自身にオートファジー(以下AU)の誘導を確認でき、このオーAU誘導により膵島のviability、インスリン分泌能共に低下することを確認できた。平成21年度の研究では、in vitro実験により確認できたAU誘導がin vivoでのラパマイシン投与によっても生体内の膵島にもAUが誘導されるか解析した。GFP-LC3 transgenic miceに0.2mg/kgのラパマイシンを腹腔内投与し、1週間、2週間、3週間の投与期間でそれぞれマウスを犠牲死さセマウス膵臓を摘出、膵島および膵外分泌組織でのAUの誘導を検証した。GFP-LC3 transgenic miceではAUが誘導された組織ではオートファゴゾームの形成と共にGFP dotの蛍光シグナルを検出することができる利点を持っている。ラパマイシン投与マウスでは、投与1週間の解析では膵島、外分泌共にAU誘導を示唆するGFP dotは検出できなかったが、投与2週間以降の蛍光組織検索では膵島、外分泌組織共にGFP dotの強い発現を確認した。さらに同組織のインスリン染色ではAUを誘導した膵島ではインスリンの染色強度は抑制されていた。マウス血糖の推移では血糖値の上昇などは認められなかった。また、ラパマイシン投与と同時にAU阻害剤である3-methladenine (3-MA)を投与されたマウスでは膵島、外分泌組織共にGFP dotは検出されなかった。【まとめ】in vivoにおいてもラパマイシン投与により膵島にオートファジーが起こることを確認でき、その膵島のインスリン染色の染色強度は抑制された。しかし、3-MAの投与によりこれらの現象を回避することができ、膵島移植の遠隔成績の向上に直結する膵島保護プロトコールの樹立に応用できる可能性を示した。
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Transplant Proceedings 41(1)
ページ: 334-338
ページ: 319-322
ページ: 391-394